輸入品はいつ在庫計上すればいいのか?
輸入品はどのタイミングで在庫に計上していますか?
「そりゃあ、受け取った時でしょ」
そうなんですけど、「受け取った時」っていつですか?
「そりゃあ、指定の倉庫とか、自社の工場に納入された時でしょ」
これは国内取引と同じ扱いにしているのでしょうが、間違っています。
正しくは、相手との約束(貿易条件)によって計上時期は変わります。
相手との約束(貿易条件)を正しく理解していますか?
海外との貿易は、輸送に時間もかかるし、文化も、法律も違う相手との取引になるので、世界的に通用する貿易の条件(契約)のテンプレート集が用意されています。
それがインコタームズです。
FOBやCIFなど聞いたことないですか?
初めて取引する相手とは、運賃の負担はどうする、保険はどうする、万一破損したらとうする、とかさまざまな条件を決めなければなりません。それも海外の取引先であれば、文化も商慣行も違う訳ですから大変な労力になります。
これらの決めなければならない条件を、標準的な条件でまとめたのがインコタームズです。
つまり「FOBでいいですか?」「いいですよ」となれば、相手と細々とした条件を交渉しなくても、様々な条件を一発で決めることができます。
その様々な条件の中には、運賃や保険をどっちがどこまで負担するという条件も入っているし、リスク負担についても決められています。
このリスク負担は、簡単に言えば「破損したり滅失したりした場合、どちらがその損失を負担するか?」ということです。
FOBやCIFの条件では、輸出港の船積み時点でリスクが売り手から買い手に転移します。
つまり輸出港の船積みまでに何かあった場合は売り手が負担し、それ以降は買い手が負担します。
さらに言い換えると、輸出港で無事船積みするまでが売り手の責任で、それ以降指定の場所までは買い手の責任になります。
会計上は、売り手が全ての義務は果たし(輸出港で無事船積みする)、お金をもらう権利獲得した時、買い手から見ればお金を支払う義務を負った時に、在庫を計上します。
つまり、リスクの移転時期=在庫の計上、となります。
輸入品の在庫の計上時期は?
最初に戻って、改めて輸入品の在庫の計上時期を考えてみます。
「そりゃあ、指定の倉庫とか、自社の工場に納入された時でしょ」
とは一概に言えないのは明らかです。DAPなど当てはまる条件もありますが、貿易条件の確認をして、リスクの移転時期に在庫を計上することになります。
<余談>所有権を取得した時ではないか?
在庫の計上時期は、リスクの移転時期と解説しましたが、「所有権を取得した時ではないか?」という疑問を持たれる方もいるかもしれないので、余談ですが、補足しておきます。
所有権というのは法律上の権利であって、我々が普段使っているのは「日本国の法律に基づく」所有権です。
海外との取引の場合、日本とは所有権の考え方・扱い方が違う国があるかもしれないし、そもそも所有権という考え方がない国だってあるかもしれません。
そういった色々と異なる法律を持つ国との間でも貿易ができるようにインコタームズでは法律的な権利である所有権を使わずに、リスクの移転という記載にしている訳です。
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